【山ゼミレポート】第9回 守りと攻めのファイナンス
みなさん、こんにちは!山ゼミ編集部の瀧田です。山崎ゼミ最後の講義となる第9回の様子をレポートします。本日は最終プレゼンテーション前の講義です。はじめに入室した時点でゼミ生の息子さんが顔を出すなど、オンラインならではの家族も気軽に参加できるアットホームな雰囲気で最後のゼミがスタートしました。
前回の第8回では組織デザインに関して学びました。組織にはチームバランスが重要で、マインドとスキルを補い合うこと、そして文化的側面と機能的側面の2つの側面について学びました。最終講義となる今回は、攻めと守りのファイナンスです。それでは今回も早速、学んでいきましょう!
ファイナンスは「未来」、アカウンティングは「過去」
「ファイナンスとは何か?」と聞かれたら、みなさんはどのように答えますか?山崎さんにとってファイナンスとは「未来」だそうです。未来にあるべき姿を思い浮かべ、そのあるべき姿を作るためにお金を集めてくることが、ファイナンス。ビジョンやミッションを実現するためにお金を投資することを指します。
一方で、もう一つ重要な視点は過去を示すアカウンティングです。数字は事業の鏡ともいい、過去の事業は数字に現れ、それを反映するのは会計(アカウンティング)です。ファクトファンディング(時系列比較)で数字の変動を比較をすることで、数字に意味をつけることをアカウンティングといいます。
ファイナンスは未来。アカウンティングは過去。
このファイナンスは「未来」というコンセプトをベースとして、重要な3つのポイントがあります。
- あるべき姿をどう描くのか
- 誰がお金を出してくれるのか
- 過去の数字をどう評価し、どう分析して未来に生かすのか
これらを中心に本日はお話ししていきます。
あるべき姿は「4」を意識して描く
未来のためにお金を集めるのがファイナンスですが、未来が見えるかどうかはフェーズによって違います。簡単にいうと、第1フェーズはバリューをこれから見つける試行錯誤の段階なので、未来像が変わってしまいます。そして第2フェーズ以降は試行錯誤の末にヒントが見つかるので、事業を大きくするために挑戦するこのフェーズからどのようにファイナンスをするのかを考える必要があります。
経営ビジョンの描き方のヒントとしては、4年を1タームとし、4つのビジョン、そして4つの損益分岐点を置くことが挙げられました。また、自分の会社が現在どのような規模の支出と収入があり、そして今後どのフェーズにいきたいのかを考え、そのフェーズに見合ったファイナンス額を決めることが重要だと話がありました。
経営においては「4」を意識する。
ファイナンスには攻めと守りがある
ファイナンスは「未来」だと山崎さんは説明します。ファイナンスには、攻めと守りの2種類あります。具体的には、事業を投資のためのファイナンス(攻め)と会社を存続させるため(守る)のファイナンスです。コロナ感染症が流行するまでは攻めのファイナンスを考えている企業が多かったのですが、今のような先行きが不透明な状況は守りのファイナンスについて考えることが多くなります。
次に、ビジョンを達成するための「攻め」の投資資金の得る方法を具体的に説明します。
交渉相手によってビジョンの使いどころを分ける
山崎さんは、交渉相手によって訴求ポイントが変わるため、相手に合わせた事業のビジョンを明示することを話しました。その交渉相手は主に3種類あります。
1つ目が、想い型のファイナンスです。それは想い共感型の個人投資家やクラウドファンディングに当たります。特にソーシャルビジョン、に共感して投資をしてくれる人たちには事業に込めた想いを語ることが大切です。
そして2つ目は事業型(リスクテイク)のファイナンスです。これはリターンを求めるような事業共感型の投資家やベンチャーキャピタルです。彼らにとって特に意識するのは、その事業がどのポジションを取っているのかと高いリターンを取れるかです。
最後のタイプは、リスクアバースの事業型ファイナンスです。これは主に銀行を指します。銀行は貸す金額と返金される金額は同じなので、特に重要視するのが、借りた資金を返せる事業計画か、ブランドに担保価値はあるか、という視点です。
ただ、ファイナンスといっても結局のところ貸し出すのは人なので、想いが伝わることもあります。実際に会って話してみないと分からないと山崎さんは話します。個人の投資家は特に見極めが肝心で、事業を助けてくれる人や特定のスキルを持ち合わせており、サポートしてくれる人、他にも1~2年ほどボランティアで事業相談してくれた人など、信頼できて一緒に事業を創ってくれる方を見つけることが大事とのことでした。
最後に、山崎さんがおすすめするセーフティネットの組み合わせとしては、クラウドファンディング・政策金融公庫・融資返済実績のある金融公庫・スーパーエンジェルなどを挙げていました。
ファイナンス手法を組み合わせてセーフティネットをつくる。
キャッシュフローマネジメントの重要性
プロダクトなどによってお金が戻ってくる期間が違うため、事業がどのようなタイミングでお金を必要とし、収益はいつ来るのかを全て把握することで資金切れのリスクを減らすことが大切です。
また、投資を増やし、会社の規模を大きくすることが必ずしも成功とは言えません。会社が大きくなり、拠点を増やすことで管理コストや諸々のコストはもちろん増大します。そのため、企業の目指すべき最適サイズの考え方があります。第2フェーズで止まるか、第3フェーズまで勇気を持って進むか、決断を分ける要因が複数あります。例えば、ビジョンのスケール感、マネジメントの思想、マネジメントの人生設計、ビジネスの性質、業界文化の特性、ノリと勢いなど。しっかりとした見極めが大変重要ですね。
キャッシュフローマネジメントにおいて理解しておくべきポイント。
このように、ファイナンスを得るときには、交渉相手によって説得力のある話が違うため、ビジョンの説明の仕方は変えるべきということが分かりました。そして事業の現在地を把握し、いつまでにどのくらいの規模になっていたいかをあらかじめ描いた上で、適正な資金規模を判断することがとても肝心です。経営者としてはビジョンを明確にし、それに見合った事業規模へ向けて計画的に資金調達をできるよう目指したいですね。
ゼミ生の事業プレゼンとディスカッション
第二部では、ゼミ生による事業プレゼンテーションとディスカッションが行われました。
角 祥太郎 さん(株式会社clapping hands)
角さんは、歯科医師として診療しながら会社を作り、自分一人のミッションのために起業しました。ミッションは「愛する人が寝たきりにならない社会」にすることです。現在の仕事はセミナーや勤務医ゼミ、オンライン診療などのシステム開発会社顧問。3年後にはショールーム型の歯科医院開業経営と、体重のように口の中の環境が言えるようにすること、コアファンの勤務医を巻き込んで作ること、患者さんのデータを入れるシステムをつくることを目指しています。
【山崎さんからのフィードバック(一部)】
- 理念だけは丁寧に説明することはとても大切
- デンタル業界のコンサルとしてトップになること(自分がプレイイングしない)
- 角さんのスピード感についていけない人が多いのではないか
- 自分がプレイする部分と人に任せる部分をきっぱり作ることが大切
- コミュニティのようなネットワークを作ることが良いのでは?
渋江 由香利さん(Foodealist)
食をテーマとした事業構想段階のFoodealistさん。渋江さん自身がヴィーガンであることから、食の多様性を受け入れる社会を作りたいという想いがあり、ウェブメディアを通じてあらゆる人々が理想の食事を楽しめる世界を作りたいと考えているとのこと。ただ、現在は行き詰まっており、訪日外国人が減っている状況の中でターゲットを変えたり、領域を変えたりと試行錯誤をしている状態で、まだ収益性やスケール感も定まっていないので方向性に悩んでいるという相談でした。
【山崎さんからのフィードバック(一部)】
- 競合がいるので、掛け算をすることが厳しいのでは
- 今の状況こそ新しい価値観を広げるようなタイミングではないのか
- どの人をターゲットにするのかに絞るべき
- ヴィーガン=我慢といった印象が強いので、それを変えることが必要なのでは
編集後記
講義は本日で最終回でした。「想い」を描くところから、実際の経営のノウハウ、そして最後にファイナンスのお話と、ビジネスを立ち上げ、成長させるために必要なエッセンスが盛りだくさんの講義内容でした。山崎さんも終始時間が足りないと言っていたくらい、まだまだ伝えたいことはありますが、ゼミ生とのディスカッションも豊富な、とても有意義な時間でした!
次回はいよいよ最終プレゼンです。これまでの講義を元に、皆さんも考え直す良いきっかけになったようです。お楽しみに!